人生かっぽ

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人生かっぽ —佐藤大地ブログ

哲学、言葉、人生観、仕事、恋愛、など人生をかっぽするような物語をつむぎます。宮城県 仙台市を主な活動拠点とする佐藤大地のブログです。2014年からEvernote公式アンバサダー。大学院では政治学を研究していました。

あまりにも無責任。自分の正義感でまわりに迷惑をかけまくる男「メロス」が目に余るから書きかえてみた

レビュー コミュニケーション
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メロスに、激怒した。

ひさしぶりに読んで、 「イヤだな」 と思った。

走れメロス』の主人公・メロスが本当に無責任で自分のことしか考えないロクでもない男に思えてきた。


家庭教師の生徒と走れメロスを読んでいたときのこと。

「メロスは激怒した……」
この有名な書き出しは今でも覚えていることにおどろきつつ。

しかし、ですよ。

なんですか、これは。


勝手。


勝手すぎるよ、メロス。


読み直すと気づく、メロスのわがまま加減


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長いのでブクマをどうぞ
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ぼくが記憶の中で美化していたメロスはこうです。


人の心を信じることができない暴君の政治に怒りをおぼえたメロスは、
正義感から王へその暴政ぶりを訴えると、処刑を命じられる。
親友セリヌンティウスを人質に、妹の結婚式をあげることだけを条件に解放してもらう。
妹の結婚式を急いであげたメロスは、自分の身代わりになっているセリヌンティウスの命のために、途中で挫折しそうになりながらも、走る。

……


しかし大きくなっていろんなことを経験してから読んでみると、こうでした。



そもそも王に怒ったのは、その日、たまたま、市を訪れたから。

必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃ)くの王を除かなければならぬと決意した。
(中略)
きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た

・そのまんまの勢いで王の城に乗り込む。

メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った


・あたりまえだけど捕まる。

たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕縛された。

・メロスの持ち物に短剣がたまたま入っている。

メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。


・王の前に突き出され、「お前を殺すために持っていた」と嘘つく。
(実際は本当に殺すために短剣を持っていたかは微妙ライン)

「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以もって問いつめた。その王の顔は蒼白で、眉間の皺(しわ)は、刻み込まれたように深かった。
「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。


・「お前を処刑する」宣告。

おまえだって、いまに、磔(はりつけ)になってから、泣いて詫わびたって聞かぬぞ。


・「妹の結婚式だけあげさせてくれ」と懇願。

ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。


・「人質はセリヌンティウス」とセリヌンティウスを勝手に人質に約束。

そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。


セリヌンティウスが人質OK宣言。

暴君ディオニスの面前で、佳よき友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。


・メロス、帰って妹に「明日挙式をあげろ」と指示。妹、赤面。

「……あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」
 妹は頬をあからめた。


・突然のメロスの挙式日程変更の指示に、婿側反対。

少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄(ぶどう)の季節まで待ってくれ、と答えた。


・婿、しぶしぶOK。

婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。

ここからメロスは挙式に参加した後に、何も言わずに村を急いで出ている。



はい、メロス、勝手すぎる。




本当の目的を見失った勝手な主人公

red wintery wine at Osteria Marco
red wintery wine at Osteria Marco / Jing a Ling



そもそも、メロスの本当の目的を確認すると
「暴君ディオニスが人の心が信じられないから人を殺すことを、市民のために止めさせること」

なのに、考えもなしに飛び込んでいったあげく、
短剣を使ってお前を殺すつもりだとか言って
「結局目的が、自分の妹の結婚式だけはあげること」
「自分の暴走によって勝手に人質にしたセリヌンティウスを取り戻しに行くこと」
この2つにすり替わっている。


本当に村人のために何かを変えたいなら、
どうしてもう少しまわりの人たちに相談するとか
市民や関係者に話を聞くとかしなかったかって話。


しかも、そういう考えなしの行動で突っ走った結果、
まわりの人たちに無理なお願いをしまくるとか。



メロス、何してんの。





こういうのを見て、
「友情のために自分に負けずに走り続けること」
「自分の正義感にもとづいて行動する大切さ」
とかだけを学んでいいんですかって思ったんですよ。


他人のことは考えなくていいの?
妹のことは?
婿のことは?
セリヌンティスのことは?
そもそもどうしてディオニスはそんなんになったの?


こういう物語を無批判にありがたがると、
思いつきの正義感で暴発して、関係ない他人まで巻き込んで
結果よければすべてOK!みたいな世の中になりませんか。


っていうか、3年前くらいのじぶんがこういう性格ひどくて気づいたら他人にめっちゃ迷惑かけていたから、よけいに考えるし、考えて欲しいなって思うんです。



その他メロスの「正義感」の犠牲者たち

banana bread
banana bread / sajia.hall


物語のなかには、メロスの自分勝手な正義感のために犠牲になる方々がたくさんいらっしゃいます。


犠牲者の声もふまえて、順を追って紹介していきましょう。


犠牲者1:メロスを襲った山賊の方々

「その、いのちが欲しいのだ。」
「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」
山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、
「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙に、さっさと走って峠を下った。


まあ、山賊ならば反撃されても正当防衛でしょうがないんですけど、
注目して欲しいのは、このセリフ

「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」

で、ここで山賊はそうだともなんだとも言ってないんですけど、メロスは
「気の毒だが正義のためだ!」
と言っている。

これ、勝手に王の命令だって勘違いしたまま攻撃している可能性ありませんか?


しかし
これが勘違いではないとしても、
メロスはこの後、完全に言い逃れできない犠牲を出していきます。

罪のない人への犠牲を自分の正義感から増やしていくのです。



犠牲者2:路(みち)行く人

路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のように走った。


犠牲者のことば
「すごい形相で勝手に突っ込んできて、ぶつかったのに謝りもしないんだよ。
 見てくれよ!こちとら人間のスピードを超えてぶつかられたから、腕を骨折だよ」


犠牲者3:酒宴の方々と犬

野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駆け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴飛ばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでいく太陽の、十倍も早く走った。


犠牲者のことば
「あの野郎、おれらが楽しく飲んでる席を気にもせずにぶつかっていきやがたった。
 せっかく盛り上がってた席が、あの野郎がびっくりさせやがったから盛り下がって、
 そのあとなんとなくパーティー全体冷めちまって解散さ」

犬「キャン……」



己の正義感で他人のことが見えなくなったら何してもいいんですか。



せっかくだから「走れメロス」を書き換えてみた

Amace en Roma
Amace en Roma / Diego Cambiaso


ということで、
このまんまだと己の正義感で行き当たりばったりの行動をして
他人を傷つける人が増えるというダメな状態になると思うので
メロスをぼく仕様に少し書き変えてみます。

ストーリーは、メロスが処刑を言い渡され、セリヌンティウスを人質にし、村に戻ったところからです。



……



メロスは村に戻って、妹に結婚式を早めるように言った。
「結婚は早いほうがいいだろう」
妹は顔を赤らめたが、メロスに言った。
「お兄さま、たしかに、挙式をあげて早く二人の生活を手に入れたいのは山々です。
 しかし、相手のほうにも都合があるのです。
 挙式は一生で一度だけ。
 どうして明日にしたいのでしょうか。理由をきちんと説明してください」

メロスはしばらく黙っていたが、重い口を開いた。
「私はシラクスで暴君の行いを聞いた。
 そこで、私の正義感から王に進言したところ、王は怒って私を処刑することにした。
 今、私のために親友のセリヌンティウスが人質になってくれている。
 私はお前の挙式だけをどうしても見届けてから、親友を救い、死にたいのだ」

妹はそれを聞いて涙した。どうにかして処刑をやめるようにできないかメロスに方法をたずねたが、メロスは下を向いてうつむき、首を振るばかりだった。

「わかりました、お兄さま。
 私もお兄さまの妹。
 お兄さまのためにも、挙式は明日でかまいません」

メロスは妹の気持ちに感謝した。

しかし、婿は反対した。結婚式にはぶどう酒が必要。
今はまだ、ぶどうの季節ではない。

「お兄さま、話が急すぎます。
 挙式を焦る気持ちはわからなくもありません。
 しかし、私たちの挙式を勝手にお兄さまの都合で明日にする、と言われても、納得がいかないのです。
 お兄さま、きっとわけがあるのでしょう。
 なんでも良いので、話してみてください」

メロスは、今までのいきさつをぽつりぽつりと、申し訳なさも込めて話をした。
それを聞いて、婿はなんでそんなことを、と嘆かわしく思ったが、大切な嫁の兄に、妹の生涯一度の晴れ姿を見せてやろうと決意した。
そうして婿は挙式を明日にすることをメロスに伝えた。


メロスは、相手を理解し、わけを話せば、他人は動いてくれるのだと教わった。


妹の結婚式を終えると、メロスはすぐさまシラクスへと走り出した。
途中、諦めそうになったが、そもそも自分の正義感で起こしたことだ、と奮いたち、また走り出す。


ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。

 「待て」
「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ 」
「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け」 
「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ」
「その、いのちが欲しいのだ」
「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな」
山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。

メロスはそこで問いかけた。
「私も自分の正義感で親友の命を差し出し、妹の結婚式まで早めてしまった。
自分の気持ち1つでどれだけ後先考えないことがまずいか知ったのだ。
山賊よ、何か人を襲わねばならないわけがあるのだろう」

すると、山賊は涙を流した。
ディオニスから命令され、メロスを殺さねば、
自分たちと家族もろとも殺されることを語った。

「私は今から王の気持ちを変えにいく。
 王は人間は信頼に足りると思えば心が変わるだろう。
 どうだ、ここで私を殺さずに様子を見てみないか」

山賊はそれを聞くと、メロスを先に通した。


そこからメロスはさらに走った。


路行く人にぶつかった際は
「すいません、急いでいるのです。すいません」
と気持ちだけだが言った。

メロスは黒い風のように走った。

野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駆け抜けるときは、
「処刑される友を救いに全速力で走ります!
 お楽しみの中大変失礼します!」
と叫んだ。

酒宴の人たちは仰天すると同時に、歓声をあげ、
そのうちのいくらかはメロスの後を追った。

犬を飛び越え、小川を飛び越えた。


走る中で気付いたのは、王のことを思った。


「自分の正義感のあまり、他人のことを考えられずに
 自分の論理だけを振りかざしていたのではないか」

それから、メロスは一縷(いちる)の涙を流した。

「王は、私だったのだ。
 あそこにいた王は、私だったのだ」


メロスは涙した。
必ずやあの誰も信じられなくなってしまった王に、
世の中にはあなたを信じる人がいるんだと気づかせてやりたいと思った。


一団の旅人とさっとすれちがった瞬間、口ずさんでいる歌を聞いた。


〜 ♪♪♪ 〜

人はそれぞれ「正義」があって、争い合うのは仕方ないのかも知れない
だけど僕の嫌いな「彼」も彼なりの理由があるとおもうんだ

ドラゲナイ ドラゲナイ ドラゲナイ
今宵、僕たちは友達のように歌うだろう
ムーンライト、スターリースカイ、ファイアバード
今宵、僕たちは友達のように踊るんだ

〜 ♪♪♪ 〜

そうして走っていくと、
ようやくはるか向こうに小さく、
シラクスの市の塔楼(とうろう)が見える。


「ああ、メロス様」うめくような声が、風と共に聞こえた。
「誰だ」メロスは走りながら尋ねた。
「フィロストラトスでございます。
 貴方のお友達セリヌンティス様の弟子でございます。
 走るのはもうおやめください」
「いや、まだ陽は沈まぬ」

「そうではございません。私に考えがあります」


陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、
メロスは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。


「待て。その人を殺してはならぬ。
 メロスが帰って来た。
 約束のとおり、いま、帰って来た」
と大声で刑場の群衆に向かって叫んだつもりであったが
のどが潰れてしわがれた声がかすかに出たばかり。


しかし、その後ろから声がした。
「王様…!」「王様…!」「王様…!」
「王様、思い出してください!」


王がそこで見たのは、シラクスの民たちだった。
メロスを襲った山賊も、途中通りかかった宴席の者たちもいる。


「王様、私たちは忘れていません。
 王様がまだ私たち市民を信じ、
 私たち市民のことを考えて政治をしてくれていたことを。
 王様、私たちはまだ信じているのです」

「王様、王様がそうであったことを思い出させてくれたのは、
ここにいる、声の出ないメロスです。
 メロスが、私たちをここに集めてくれたのです」

「王様、メロスを殺さないでください!」

「殺さないでください!」

「王様、私たちは王様を信じます!」


それはフィロストラトスの案であった。
走りながらフィロストラトスが提案したのはこうであった。

かつての王がまだ人を信じることができていたときのことを市民の力によって目の前に見せれば、
王はもとの人を信じる王に戻るはずだ、と。
気持ちが変わった王とは言えども、
自分の権力を成り立たせる多数の市民を目の前には、
その信用を大きく損なう処刑は行うまい、と。


王は群衆を目の前にして、心をゆさぶられた。
「そうであった、私には市民がいた。私を信じてくれる市民が。
 それこそが、私が王たる理由であった」

セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。
セリヌンティウス
メロスは眼に涙を浮べて言った。
「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。
 自らの正義感だけど、今まで君に散々迷惑をかけてきた。
 私はそれにやっと気づいた。
 君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ」

 セリヌンティウスは、今までの言葉にできない怒りを込めるように、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。
思いのほか痛くて、メロスは一瞬ビビった。

暴君ディオニスは、群衆に近づき、顔をあからめて、こう言った。

「おまえらの望みは叶ったぞ。
 おまえらは、わしの心に勝ったのだ。
 信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。
 どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。
 どうか、わしの願いを聞き入れて、もう一度おまえらの仲間の一人にしてほしい。」

 どっと群衆の間に、歓声が起った。

「万歳、王様万歳。」


ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。


「メロス、君は真っ裸じゃないか」
「そうか、私は目の前のことばかりを気にして、
他人から私がどう見えるかなど気にもとめていなかったのか。こりゃうっかり」


勇者は、ひどく赤面した。



 ***


だれかの正義は、だれかの不正義。
だからぼくらはコミュニケーションする。


大きくなった今だからこそ、もう一度、名著を。

『走れメロス』

走れメロス

走れメロス

『新釈 走れメロス』



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